クリエイトニュース・アーカイブ

タイトル クリエイトニュース41号
発行日 2020年6月
PDF  クリエイトニュース41号.pdf 21
画像
巻頭言 新型コロナウイルスの中で
執筆者 村田 民雄
更新日 2025-05-20 14:01:46
巻頭言(文章)

新型コロナウイルスの中で

新型コロナウイルスの感染防止のためと、県内でもさまざまな施設や業種が自粛の対象になった。その中に映画館も入っており、休館になる前日、お目当ての映画を観るために午前と午後2回にわたってフォーラム東根に足を運んだ。館内には人影がなく、シアターも2回ともひとりっきりの貸し切り状態だった。途中携帯電話が鳴っても、まわりに気兼ねすることもなく通話をしながらの映画鑑賞である。かつての会場満員の中で笑いやため息に包まれながらの映画館風景は望むべくもないが、200席のホールでひとりじめ映画鑑賞に、ふと40年程前に出版された絵本『せかいにパーレただひとり』を思い出した。

主人公のパーレがある日目をさますと、家の中も外に出てもまわりに人が誰もいないことに気付く。これ幸いと、お菓子屋でチョコレートを食べたり、市電を運転したり、銀行からお金を持ち出したり、しばしやってみたいことがなんでもできる、夢のような時間を過ごすのだが、やがて世界のひとりじめよりも、みんなといることの幸せに気が付くのだった。

同じ頃に読んだ本に『第三の波』(アルビン・トフラー著)がある。この本では、人類が農耕を始めた第一の波、産業革命による工業化社会を第二の波、そして情報化社会の現代を第三の波と定義する。これまでの仕事がITを駆使した在宅勤務に置き換えられ、労働者は出勤することなく、自宅のパソコンの前で仕事が出来る。そのことで鉄道や道路などのインフラコストが削減され、通勤に要する時間を育児や趣味に使うことが出来るというバラ色の近未来予言書だった。

40年後の今、予言はコロナ禍の非常事態の中で、テレワーク、オンライン授業、Web会議などの形で現実となり、社会の機能は維持できるように見えたが、それはトフラーの描いたバラ色の未来ではなかった。

人と人との生身のつながりから生まれる、涙を流したり笑いあったり、思いやりや共感など、人間として成長していく上で大切なものの価値を、改めて考えさせられた3ヵ月間だった。

広報・地域振興担当理事
村田 民雄